日本で暮らす外国人の方々や、外国人を雇用する企業の皆様にとって、入管法や在留資格に関するルールの変化は非常に重要なテーマです。
政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を掲げ、日本の安全・安心を守りながら、外国人との共生を図るための施策を進めています。
今回は、政府が公表した「国民の安全・安心のための取組における進捗状況」と、それを踏まえた「今後の取組の方向性」の2つの重要資料をわかりやすく統合し、行政書士の視点から「今後、外国人の在留や雇用に関するルールがどう変わっていくのか」を解説します。
1.出入国・在留管理のDX化(デジタル化)と情報連携の強化
現在最も急ピッチで進められており、今後の入管行政の基盤となるのが「デジタル化」と「省庁間の情報連携」です。
- 「特定在留カード」への原則一本化:
- マイナンバーカードと在留カードを一体化させた「特定在留カード」の運用が令和8年6月から開始されました。今後は、オンライン申請への対応などを進め、全ての在留外国人への「原則取得」に向けた施策が展開されます。
- 税金・社会保険情報の連携強化(公共サービスメッシュ):
- 令和9年3月以降、入管庁と国税庁、厚生労働省、地方自治体との間で、システムを通じた情報連携が順次開始されます。これにより、「税金や年金、健康保険料をきちんと払っているか」が在留審査においてより厳格かつ効率的にチェックされるようになります。
- 在留手続の完全オンライン化と電子渡航認証(JESTA):
- ビザ免除国からの入国者に対し事前審査を行う「JESTA」が令和10年度中に導入予定です。また、在留手続の原則オンライン化(令和9年度~)やキャッシュレス決済(令和11年度~)が順次導入され、利便性と厳格な管理が両立されます。
2.「永住許可」と「帰化」の審査厳格化
日本で長く安定して暮らしたいと考える外国人の方にとって、最も注意すべきなのが「審査の厳格化」です。
- 永住要件の見直しと取消事由の拡大:
- 令和9年4月に向け、永住許可基準(独立生計要件や国益要件)の見直しが行われます。また、故意に税金や社会保険料を納めない悪質なケースでは、永住者の在留資格が取り消される運用が開始されます。さらに、「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の受講を永住条件に含めることも検討されています。
- 帰化の厳格化:
- 永住許可との整合性を図るため、原則10年以上の在留や日本社会への融和が求められるなど、帰化審査の厳格化も引き続き検討されています。
- 就労ビザ等の実態調査強化:
- 「経営・管理」や「技術・人文知識・国際業務」、また家族帯同時の「扶養能力」などについて、事業実態や活動内容の調査が強化されています。
3.不法滞在者・不法就労ゼロに向けた強力な対策
「不法滞在者ゼロプラン」に基づき、不適正な就労や滞在に対する摘発や指導が、デジタル技術も活用しながら一段と強化されます。
- 企業に対する「在留カード等読取アプリ」の徹底:
- 雇用主が外国人雇用状況届出を行う際、「在留カード等読取アプリ」の使用を徹底するよう指針が改正されました(令和8年6月適用)。これにより、未届の企業に対する労働局の指導が迅速化されます。
- デジタル技術を活用した摘発と送還の促進:
- サイバーパトロールなど情報収集・分析機能を強化し、不法就労助長者などの摘発を進めます。また、退去強制が確定した外国人の送還(護送官付き国費送還等)を倍増させる目標を掲げています。
- 難民認定申請の厳格化・迅速化:
- 誤用・濫用的な申請には厳正に対処し、審査期間を大幅に短縮(令和12年までに平均6ヶ月)する方針です。
4.秩序ある共生社会のための受入環境整備
ルールを厳格化する一方で、日本で正しく生活しようとする外国人に対するサポート体制の整備も進んでいます。
- 「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の創設:
- 日本のルールや制度、日本語を学ぶプログラムが創設され、令和10年度からの試行実施が予定されています。この受講履歴を、今後の在留審査の考慮要素とすることが検討されています。
- 双方向型のオリエンテーションと基本方針の策定:
- 入国前や在留中の外国人に対し、国主導で日本のルール等を説明する対話型オリエンテーションが開始されています。また、令和8年度中に外国人受入れの新たな「基本方針」が取りまとめられる予定です。
今後の対策と注意点
現状の進捗と今後の方向性から読み取れる最も重要なメッセージは、「ルールを守り、税金や社会保険を適正に納めているかどうかがマイナンバー連携によって丸裸にされ、審査に直結する」ということです。
【外国人の方へ】
特に「永住許可」や「帰化」のハードルは今後さらに高くなります。令和9年4月に向けて独自の審査基準見直しも控えているため、日々の公的義務(税金・年金等の納付)を絶対に怠らないようにしてください。「うっかり払い忘れた」という言い訳は通用しなくなります。
【企業のご担当者様へ】
外国人を雇用する際は、在留カードの真正性確認(読取アプリの活用)を必ず行ってください。社会保険の加入状況や適切な労務管理が、企業側の責任として厳しく問われる時代になっています。もはやアプリでの確認は“推奨”ではなく“必須”です。
「自分の現在の状況でビザの更新・永住申請ができるか不安」「自社の外国人管理体制を見直したい」という方は、ぜひお早めに当事務所までご相談ください。





